姿なき花の香

風にのり ふわり香るは 沈丁花 姿なくとも こころ癒され

かぜにのり ふわりかおるは じんちょうげ すがたなくとも こころはいやされ

風に乗ってふわりと届いた沈丁花の香りに、花姿が見えなくても心が癒された。

どこからともなく香ってくる沈丁花。

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その姿は見えずとも、懸命に花を咲かせているのが手に取るようにわかる。

香りだけなのに、随分と心が癒された。


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あなたに寄り添う心の短歌は、日常のふとした瞬間を短歌でつづっています。

人の心、季節の移り変わり、花の色、風の音。それは気にしなければ気にならずに済むくらいの小さな出来事。

その小さな出来事を忘れないように、思い出せるように、短歌を作ります。あなたの心の琴線に触れる歌があれば幸いです。

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若芽の野原

若芽吹く 萌黄の野をゆく 幼子の 手には蒲公英 そよ風ゆれる

わかめふく もえぎののをゆく おさごの てにはたんぽぽ そよかぜゆれる

若芽が芽吹いてきた春の野原を駆ける幼子。
その手には黄色いタンポポがしっかりと握られて、そよ風に揺れている。

若芽が芽吹き、生命力あふれる萌黄色の野原に、幼子が駆けていく。

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その手にはしっかりとタンポポが握られて、そよそよと風に揺れている。

みなぎる春の躍動感に、こちらまで元気になるようだ。

 


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恋の終わりに

春霞 夢かうつつか 幻か 知りつつ惜しむ 終わりゆく恋

はるがすみ ゆめかうつつか まぼろしか しりつつおしむ おわりゆくこい

春霞にぼうっと浮かぶ街並みの中、まだこの恋が続くのではないかと夢を見てしまう。
でも、もうそんなことはないと、本当はわかっている。

春霞の中、あちこち浮かれている様子がどこか遠くの世界のよう。
この手を伸ばせば、まだ触れられる距離にいるのに。

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でも、本当はわかっている。

もう、この恋は終わりに向かっているということを。


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花の淡雪

冬なごり 惜しむかのよう 春の野に 咲く雪柳 花の淡雪

ふゆなごり おしむかのよう はるののに さくゆきやなぎ はなのあわゆき

冬の名残を惜しむかのように、春の野に淡雪の如く雪柳が咲いている。

冬の名残りを残すこともなく、季節は春へと移っていく。

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春の到来に喜び様々な花が咲き乱れる中、淡雪のように咲く雪柳。

それはまるで、冬の名残を惜しんでいるかのよう。


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雨の静けさ

雑踏の ざわめき消すは 差す傘に 落ちる雨音 ぽつぽつひびく

ざっとうの ざわめきけすは さすかさに おちるあまおと ぽつぽつひびく

いつもは騒がしい雑踏も、傘に落ちる雨音で消されていくようだ。

いつもどこか忙し気で騒がしい街並み。

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朝から降り続いている雨のおかげで、みなさらに足早に家路を急ぐ。

その雑踏が、いつもよりも気にならないのは、おそらくこの傘に落ちる雨音にかき消されているのだろう。


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