津軽百首(真冬の川音)

荒ぶ風 真白に染まる 津軽野の 冴ゆる川音 聞く人もなく

すさぶかぜ ましろにそまる つがるのの さゆるかわおと きくひともなく

津軽平野に吹き荒ぶ風は、雪を舞い上げ真っ白な世界に染め上げる。その白銀の世界を流れる川音はとても清らかではあるが、その音を聞く人はいない。

津軽の冬は厳しい。

さえぎるもののない津軽平野は、
北風が縦横無尽に吹き荒ぶ。

雪に覆われた景色が、
舞い上がる雪でさらに白くなり、
白銀の世界へと変える。

止まぬ風は波のように、
時に強く、時に弱くなり。

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風が吹き止むほんの僅かな時、
絶えず流れる川音に気が付く。

冷たさを増す空気に、
清らかさを増す川音。

だが、この美しい音を聞く人はいない。

訪う人のいない川岸に、
ただ清らかな川音だけが響いて、
そして、風の音に消えていく。


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津軽百首(年の瀬の五所川原駅)

年の瀬は 待合室も 風やまぬ そそめく人も バスも走りて 

としのせは まちあいしつも かぜやまぬ そそめくひとも ばすもはしりて

年末の五所川原駅の待合室は、風が止むことはない。師走の買い物で慌ただしく行きかう人や、本数が増えたバスの流れが止まることがないように。

年の瀬はどこもにぎやか。
それは、雪深い津軽でも同じこと。

年の瀬の五所川原駅は、
忙しそうに行き交う人たちも、
様々な方面に向かうバスたちも、
止まることはない。

色とりどりの風呂敷の中身は、
年越しに必要なあれこれ。

頭には雪除けとオシャレを兼ねたストール。
雪の中で買い物した後だからか、
頬は赤く、ストールに残っていた雪はじっくり融けて水滴に。

どのベンチも人が座っていて、
ことさら、
ストーブの周りの席は大人気。

座りきれない人は、
立ちながら看板を眺めたり、
バスの往来を眺めたり。

待合室のドアは、
常に開け閉めを繰り返し、
風が止むこともなく。

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もうもうと白く煙る待合室は、
奥の食堂からのいい匂い。

お土産にはおやきかな。
白あんとこしあん、粒あん。

薄緑の紙に包まれて、
家に着く頃にはほのかに温かいくらい。

厳しい冬に閉ざされる津軽。

バスに乗り込めば、
轍の道をゆっくり進んで、
みんなを家路へ送り届ける。

空はどこまでも薄暗く、
降り続ける雪は止むこともなく、
ただただすべてを白に還そうとするけれど。

それでも、
年の瀬の待合室は、
春が来たかのようににぎやか。

通り過ぎる風は、
やはり止まることなく、
ほんの少し暖かさを増して、
年の瀬の五所川原駅を吹き抜けてゆく。


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津軽百首(宵の岩木山)

神さぶる 岩木の山は 二藍の 被衣かぶりて 宵を待つらむ

かみさぶる いわきのやまは ふたあいの かつぎかぶりて よいをまつらむ

神々しい岩木山は、二藍色の被衣かぶりながら、夜を待っているのでしょう。

被衣 (かつぎ)は、
女性が顔を見せないようにするために頭からかぶる衣のことです。

岩木山の神様は、
女性といわれています。

津軽富士と呼ばれるくらい美しく、
見る方面によって、
女性の横顔にも見えるといわれています。

私のふるさとである鶴田町は、
ちょうどこの横顔の岩木山が見える場所。

農作業をするときも、
学校に通う時も、
会社に向かう時も、
どんな時も。

岩木山は、
常にそこにあって、
心のよりどころになっています。

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もともと、
雪深い津軽には、
極端に高い建物は存在しません。

雪が積もったときの、
落雪の危険性や、
屋根の雪下ろし問題などもあるからです。

だからこそ、
どこまでも見通しが良く、
その広い平野に岩木山があります。

日が落ちて、
夜になる前の宵のひととき。

岩木山の神様は、
二藍色の被衣をかぶり、
夜を待つのでしょう。

それほどまでに、
この時間の岩木山は美しいのです。


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津軽百首(鏡餅作り)

正月の 餅を丸めて 暮れ行けば 白に染まるる 津軽の冬よ

しょうがつの もちをまるめて くれゆけば しろにそまるる つがるのふゆよ

お正月用の鏡餅を丸めて作る頃には、津軽は雪も深くすべてが白に染まる世界に変わっている。

私の実家では、
鏡餅はいつも手作りでした。

あまりにも早く作りすぎるとカビがはえるので、作るのは大みそかの前日。

祖母と母、そして私と、
女三人がつきあがった餅を丸めます。

つきたてのお餅は、
それはそれは熱くて火傷しそうなほど。

粉をまいて、
でも粉をつけすぎるとひび割れるので、
気を付けながら作っていく。

鏡餅は神様へ備えるもの。

幼いながらに、
楽しさよりも緊張して作っていました。

鏡餅が作り終わったら、
いよいよおせち作り。

とはいえ、
青森は大みそかにお膳としてみんなで食べるので、
年末は大忙し。

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紅白歌合戦が始まるころには、
みんなで座って、
大人はお屠蘇、子供はジュースで食べ始める。

お膳は一年に一度、
この時だけ出されるもの。

特別感が満載で、
兄と二人でわいわいがやがや。
父は祖父と静かに酒を酌み交わす。

祖母は大好物の数の子を食べられるし、
母もやり終えた解放感でほっとするのか、
みんなうれしそうな顔で年越し。

もう遠い昔のはずなのに、
今でも、
12月になると思い出す。

青森の風習。
伝えていかないとと思いつつも、
なかなかお膳を買って作るということまでいかず。

せめて、
今年は甘納豆で作る甘いお赤飯を作ろうかな。
いや、紅ショウガの甘いお稲荷さんかな。

そんなことを考えながら、
今年の年末をどう過ごすか考え中の今日この頃です。



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津軽百首(津軽じょんがら)

じょんがらは 岩にぶつかる 波のやう 津軽の叫び うねりを増して

じょんがらは いわにぶつかる なみのやう つがるのさけび うねりをまして

津軽三味線が奏でるじょんがら節は、まるで真冬の日本海の荒い波が岩にぶつかるかのように激しい。それはまさに、津軽人の心の叫びであり、力強い音色はうねりを増すように人々を魅了していく。

津軽じょんがら節は、
心の奥にある魂そのものに響く音。

津軽三味線の迫力ある演奏は、
一生に一度は経験していただきたい。

和太鼓のように、
体に響く音でありながら、
音色はあくまでも透明感があり、
心に深く刻まれる。

その荒々しさは、
まるで冬の日本海のよう。

身を切るような寒さに、
吹き荒ぶ風。

波はうねりを増しながら、
その勢いのまま岩にぶつかっては、
激しい水飛沫とともに消える。

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鉛色の空はどこまでも重く、
仄暗い景色はただ、
春が来るまでじっと耐えるのみ。

哀しさややるせなさ、
そして絶望にも似た諦め。

でも、津軽に住むならば、
それらをすべて受け入れるしかない。

そんな津軽人の心の叫びを、
津軽じょんがら節は表しているかのよう。

津軽三味線の音色はやはり、
冬の日本海が一番よく似合う。

きっと、
先祖代々聴いてきた魂の音。

鉛色の冬の空を見上げるたび、
遠く離れた場所にいても、
津軽じょんがら節を思い出す。


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