幾たびも 君が呼びし名 こころ燃ゆ 見ずとも香る 桜の如し
いくたびも きみがよびしな こころもゆ みずともかおる さくらのごとし
あなたの口から、あなたの声で、私の名を呼ばれるたびに、心が燃えるように熱くなり、見えなくても感じる桜の花の香りのように心が色づきます。
時は春。
凍えるような寒さがいつのまにかやわらぎ、若葉を照らす光が少しずつ強さを増し、吹き抜ける風が心地よく感じられるようになった頃、薄桃色の花が開き始めます。
花の名は、桜。
古今和歌集の頃から春と言えば桜と言われるようになり、日本の春の象徴ともいえる誰もが知っている春の花。
一斉に咲き、そして、潔く散る。
満開の桜の中でも、その香りは決して強すぎることはなく、あくまでも控えめにそっと寄り添う。
それはまるで、恋をしている胸の内そのもの。
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胸の中では愛する人への愛情でいっぱいなのに、表に出すことは怖いのです。
もし、嫌われたら、もし、愛想をつかせたら、もし、そっけなくされてしまったら。
愛するからこそ、他の人にされてもなんとも思わないのに、きっと立ち直れないほど傷ついてしまいそうで怖いのです。
でも、愛する人に名を呼ばれるたびに、その声が、耳にから胸に落ちるとき、自然と心が熱を持ち始めてしまう。
そう、まるで満開の桜のように、一斉に心が色づいていくのです。
きっと、隠している私の心の内も、桜の香りが隠せないように、あなたにもわかってしまうのでしょう。
どうかどうか、この胸の高鳴りが気づかれませんように。
私にはまだ、あなたに思いを告げるほどの覚悟が決まっていないのです。
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