風船が しぼんじゃったと 泣く吾子を 抱きしめ諭し 時間は止まる
ふうせんが しぼんじゃったと なくあこを だきしめさとし じかんはとまる
「大切な風船がしぼんじゃった」と泣く娘を、抱きしめながら諭す朝。まるで、家の時間が止まったかのように静かになる。
朝、家事をしていると、
年長の娘が急に後ろから抱き着いてきた。
「どうしたの?なにかあった?」
「ううん、なんでもない…」
それでも、手を止めて娘の顔を見ると、
うっすらと目が赤く、泣いた痕。
とりあえず抱きしめて、
部屋を見回すと、
しぼんだ風船がポツンと床に置かれていた。
ああ、なるほど。
年長の娘が、
大好きなみんなの絵を描いた、
世界に一つだけの風船。
その風船が、
ゆっくりゆっくり小さくなり、
今朝、
一気にしぼんでしまった。
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「大丈夫、風船さんの中の空気は、風さんになって、いつもそばにいるんだよ」
娘の涙が止まるまで、
娘の悲しみが癒えるまで、
ゆっくりと諭しながら、背中ポンポン。
洗濯も干さないと、ごみも出さないと。
あれこれ思うけど、今はいいや。
慌ただしい朝の時間が、止まる。
いつか、娘も大人になって、
ひとりでしぼんだ風船を見ても泣かなくなる日が来る。
きっと、こんな時間は、もう二度とないのだから。
その後、落ち着いた娘は、
風船さんと一緒にテレビを見て元気に笑ってましたとさ。
めでたし、めでたし(笑)