津軽百首(年の瀬の五所川原駅)

年の瀬は 待合室も 風やまぬ そそめく人も バスも走りて 

としのせは まちあいしつも かぜやまぬ そそめくひとも ばすもはしりて

年末の五所川原駅の待合室は、風が止むことはない。師走の買い物で慌ただしく行きかう人や、本数が増えたバスの流れが止まることがないように。

年の瀬はどこもにぎやか。
それは、雪深い津軽でも同じこと。

年の瀬の五所川原駅は、
忙しそうに行き交う人たちも、
様々な方面に向かうバスたちも、
止まることはない。

色とりどりの風呂敷の中身は、
年越しに必要なあれこれ。

頭には雪除けとオシャレを兼ねたストール。
雪の中で買い物した後だからか、
頬は赤く、ストールに残っていた雪はじっくり融けて水滴に。

どのベンチも人が座っていて、
ことさら、
ストーブの周りの席は大人気。

座りきれない人は、
立ちながら看板を眺めたり、
バスの往来を眺めたり。

待合室のドアは、
常に開け閉めを繰り返し、
風が止むこともなく。

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もうもうと白く煙る待合室は、
奥の食堂からのいい匂い。

お土産にはおやきかな。
白あんとこしあん、粒あん。

薄緑の紙に包まれて、
家に着く頃にはほのかに温かいくらい。

厳しい冬に閉ざされる津軽。

バスに乗り込めば、
轍の道をゆっくり進んで、
みんなを家路へ送り届ける。

空はどこまでも薄暗く、
降り続ける雪は止むこともなく、
ただただすべてを白に還そうとするけれど。

それでも、
年の瀬の待合室は、
春が来たかのようににぎやか。

通り過ぎる風は、
やはり止まることなく、
ほんの少し暖かさを増して、
年の瀬の五所川原駅を吹き抜けてゆく。


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